アスベスト健康被害と会社役員の責任

アスベスト(石綿)は、長期にわたって吸入すると 中皮腫・肺がん・石綿肺 などの重大な疾患を引き起こします。
潜伏期間が15~40年と長いため、現役を退いた後に病気が発症するケースも多く見られます。
被害に遭われた方やそのご家族は、医療費や生活費の補填、さらには損害賠償の請求 が大きな課題となります。
今回は、アスベスト健康被害について、アスベスト工場や建設会社の役員に対し、責任追及ができるか解説します。
1 会社役員に対する損害賠償請求
アスベスト被害は、単に「運が悪かった」では済まされません。
建設現場や工場で働く労働者の安全を守るべき会社や役員が、適切な対策を怠っていた場合、法的責任を問うことが可能です。
⑴ 会社法上の役員責任(会社法429条1項)
会社役員が職務を行うにあたり悪意または重大な過失があった場合、第三者である労働者に生じた損害について賠償責任を負います。
すなわち、アスベスト対策を講じなければ、労働者の生命・健康を損なう危険があることが、当時から十分に予見可能であったにもかかわらず安全管理を怠った場合、役員の責任が認められ得ます。
⑵ 民法上の不法行為責任(民法709条)
会社役員の行為または不作為によって、労働者がアスベスト被害を受けた場合、役員個人に対しても不法行為責任を追及し得ます。
⑶ 中小企業と大企業での違い
では企業規模によって、責任追及の可否に違いがあるのでしょうか?
【中小企業の場合】
代表者や役員が現場の安全管理を直接担っていることも多く、アスベストばく露実態を知りながら放置した場合には、個人責任が認められる可能性が高いです。
【大企業の場合】
役員が直接現場を管理していなくても、安全配慮義務を果たさなければ責任を免れることはできません。
実際に従業員過労死に関する損害賠償請求事件(大庄事件・大阪高裁平成23年5月25日判決)では、会社だけでなく複数の役員に賠償責任が認められました。
アスベスト被害でも同様の法理が妥当します。
2 請求できる補償・給付金の例
具体的には以下の給付金等があります。
- 建設アスベスト給付金制度(最大1300万円)
- 労災保険による補償(療養補償給付・遺族補償給付など)
- 石綿健康被害救済制度(医療費補填、療養手当など)
- 会社役員・企業に対する損害賠償請求
これらを併用できる場合もあり、請求の選択と立証の方法が結果を大きく左右します。
3 弁護士に依頼するメリット
アスベスト被害の損害賠償請求は、単なる書類提出ではなく、ばく露歴や企業の安全配慮義務違反を立証する作業が不可欠です。
弁護士に依頼することで具体的には次のようなメリットがあります。
① 最適な制度を選択(労災・給付金・損害賠償の併用可否を判断)
② ばく露歴の証明・資料収集をサポート
③ 会社や役員に対する法的責任追及が可能
④ 不支給や認定却下への不服申立ても対応
専門知識をもつ弁護士に依頼することで、補償を最大限に獲得できる可能性が高まります。
4 まとめ
いかがでしたでしょうか。
アスベスト健康被害は、企業や役員が適切な対策を怠った結果である場合が少なくありません。
会社だけでなく、役員個人に対しても損害賠償請求が可能です。
被害に遭われた方やご遺族は、まず弁護士にご相談ください。
法的責任を明確にし、補償や給付金を確実に受け取るためのサポートを受けることができます。
あかがね法律事務所はアスベストに関する補償給付申請等も取り扱っております。
下記よりご相談をお待ちしております。