多重債務の仕組みとは?返済が困難になる流れと抜け出すための法的手段

複数の借入先から借金を重ねてしまい、返済が苦しくなる“多重債務”

今回はその典型的な仕組み・構造・原因・リスクを解説し、法律的な対処(債務整理・自己破産)への入口も紹介します。

1 多重債務とは何か

多重債務とは、複数の貸金業者・クレジット会社・カード会社などから借入を繰り返し、返済に追われて新たな借入れを重ねる結果、元本・利息・返済負担が膨らみ、返済不能または返済が著しく困難な状況に陥った状態を指します。
言い換えれば、「借金を返すために別の借金をする」「利息・遅延損害金が元本を上回る勢いで膨らむ」など、負債の“雪だるま化”が特徴です。

2 多重債務に至る典型的な仕組み

多重債務に陥るまでには、ある一定の流れ、構造があります。

⑴ 初期の借入・支出のズレ

生活費が足りない、収入が減少した、予期せぬ出費(病気・冠婚葬祭・失業など)が発生した――

こうした「生活のひずみ」が、借入に向かう第一歩となることが多いです。
この段階では、まだ「一時的に借りて返そう」という考えの人が大半でしょう。ですが次のステップ以降で負担が増加していきます。

⑵ 借入先、借入額の増加

段々と借金の返済が苦しくなってくると、借金を返すために別の金融機関・カード会社から追加で借入を行う、もしくは既存の借入をリボ払いや分割払いで延ばすことが常態化します。
これにより利息等を含め、毎月の返済金額や返済総額が増加します。

⑶ 収支のバランス崩壊、返済の延滞開始

借入額・利息・返済月額が拡大した結果、収入から支出や返済額を差し引いた「余剰金」がほとんど残らなくなり、返済が遅滞し、遅延損害金が発生し始めます。
この時点で、各借入先から「督促・訴訟提起」のリスクが高まります。

⑷ 借金返済を他の借金で補う“借金の借金”サイクル

返済が追いつかなくなると、更に新たな借入れで既存の借金を返すという“借金のための借金”構造に陥ります。

これがまさに多重債務が“雪だるま式”に増えていく仕組みです。
このサイクルが続くと利息や遅延損害金の負担が元本返済を超え、「返しても返しても元本が減らない」状態になってしまいます。

⑸ 結果的に返済不能⇒債務整理・破産の検討へ

このようなプロセスを経て、多重債務の状態になると、個人での解決が極めて困難になるため、早期に任意整理・自己破産・個人再生などの債務整理手続きを検討することが必要となります。

3 なぜ多重債務が起きるのか

多重債務の背後には、借り手側・貸し手側それぞれに要因があります。

【借り手側の要因】

借り手側の主な要因は、低所得・収入の減少・失業・転職・病気・高齢などによる返済能力の低下です。

また、クレジットカード払い・リボ払い等、支出を過小評価し、金銭管理が未熟である場合にも多重債務に陥りやすいです。

さらに、借金による心理的ストレスから支出を抑えられず、浪費・ギャンブル等に走るケースも多いです。

【貸し手側の要因】

クレジットやキャッシング等が規制緩和により容易になりました。これにより、安易に借り入れに走る人が増えました。

また、キャッシュレス化や後払いサービス・スマホ決済の普及により、収支バランスが見えにくくなっていることも要因の一つです。

4 多重債務を放置したらどうなる?

多重債務を放置すると、次のような深刻な問題やリスクが生じます。

  • 元本・利息・遅延損害金が膨らみ、返済総額が拡大
  • 支払い遅滞による信用情報事故(いわゆる「ブラックリスト」)への記録がされ、融資・ローンの審査通過が困難になる
  • 訴訟提起、給与の差押えといった法的措置を執られるリスク増加
  • 複数の借入先からの度重なる督促で精神的負担が増大

5 多重債務から抜け出すためには

多重債務の状態に陥った場合、自力での解決は非常に困難です。早期に弁護士に相談し、適切な債務整理方法を検討しましょう。

代表的な債務整理は次の3つです。

  • 任意整理
    裁判所を通さずに、各債権者(借入先)と話し合って、返済条件を変更・利息を減らす方法。
  • 個人再生
    裁判所を利用した手続き。再生計画を立て、一定の債務を免除した上で残債を返済していく制度。
  • 自己破産
    裁判所を利用した手続き。支払い不能を前提に、裁判所から免責許可決定をされれば、債務を免除する制度。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

6 まとめ

多重債務は、単に「借金が多い」「返済が苦しい」という状態ではなく、 複数の借入先・複数の利息・遅延損害金等が絡み合い、返済能力を超えてしまった構造的な状態です。

もし、返済に追われている、借入先が増えてきていると感じたら、早めに弁護士に相談して、解決のための第一歩を踏み出してください。

どの方法が最適かを判断するためにも、まずはあかがね法律事務所までご相談お待ちしております。

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