早期釈放に向けた活動について(被疑者編)

逮捕されてから起訴(不起訴)に至るまで、原則として被疑者の身柄拘束は最長で23日間 に達することがあります。
この間、被疑者本人は自由を奪われ、取調べ等を受けることになります。
また、長期間の拘束は精神的・肉体的負担を強いるだけでなく、会社での欠勤、学校への出席停止など、社会的な不利益を引き起こします。
したがって、できるだけ早く身柄を解放(釈放)することは、被疑者やその家族双方にとって非常に重要な課題です。以下では、捜査段階のそれぞれで弁護士ができる活動とポイントを整理します。
1 身体拘束の大まかな流れ
逮捕から起訴に至るまで、基本的にはには以下の順序で手続きが進みます。
① 警察が逮捕 → 48時間以内に検察へ送致
② 検察官が24時間以内に裁判所に対し勾留請求
③ 裁判官が勾留の要件を審査 → 勾留決定(原則10日)
④ その後検察官は必要なら勾留延長請求 → さらに10日間延長可能
⑤ 検察官が勾留期間満期までに起訴するか不起訴にするか判断
この間、弁護士ができる限り家族等と協力して迅速に活動を行うことが、早期釈放を実現する鍵となります。
そして弁護士は、早期釈放を実現するために次のような手続きを行います。
- 検察官や裁判官に対し、勾留請求や勾留決定をしないよう意見書を提出する
- 勾留決定がされた場合には、準抗告を申し立てて勾留の取消しを求める
- 被害者との示談交渉を進め、勾留の理由を弱める事情を整える
特に「準抗告」は、身柄拘束の不当性を訴える有効な手段として重要です。
2 準抗告とは
準抗告とは、裁判官が勾留を決定したことに対して、弁護人などがその判断の取消しを求める手続です。
この手続により、別の裁判官(または合議体)が改めて勾留の要否を審査します。
つまり、準抗告は「勾留が妥当かどうか」を再検討してもらう制度であり、身柄拘束の継続に対する実質的なチェック機能を果たしています。
3 準抗告が認められる要件と判断要素
準抗告が認められるためには、刑事訴訟法第60条の勾留要件を満たさないことを具体的に主張・立証する必要があります。
第60条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。 一 被告人が定まつた住居を有しないとき。 二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。 三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。 ※起訴までの間は、上記「被告人」を「被疑者」と読み替えます。 |
では具体的に見ていきましょう。
⑴ 住居不定
読んで字のごとし、被疑者が住居不定の場合です。ネットカフェ等を転々として生活している方などはこれに該当します。
⑵ 罪証隠滅のおそれ
被疑者が証拠を隠滅・改ざんする、または、被害者や目撃者に接触する可能性がある場合を指します。すでに捜査機関によって証拠収集や供述録取書の作成が終わっている場合はそのリスクが低いと判断されやすいです。
⑶ 逃亡のおそれ
被疑者の住所・職業・家族関係などが安定しており、逃亡の可能性が低い場合は勾留の必要性がないと判断されやすいです。
弁護士はこれらの事情を裏付ける資料(雇用証明書、身元引受書、誓約書、示談書など)を裁判所に提出し、「勾留の要件に該当しない」ことを具体的に示す活動を行います。
4 準抗告が認められやすいケースと難しいケース
一般的に準抗告が認められるのは全体の件数から見れば多くはありません(おおむね15~20%程度です)。
ではどのような場合に準抗告は認められやすいのでしょうか。
◎ 認められやすいケース
- 社会的基盤(勤務先・家族・住所など)が安定している
- 任意同行に応じ、逃亡の意思がないことが明らか
- 証拠が収集済み、被害者等からの供述録取書が作成済み等、証拠隠滅の可能性が低い
- 同種前科がない
- 親族や勤務先関係者の身元引受書がある
- 示談や被害弁償の見通しが立っている
✕ 認められにくいケース
- 複数回の同種犯罪歴がある
- 被害者や関係者への接触の可能性が高い
- 共犯事件であり、証拠隠滅の可能性がある
- 定職についていない、住所が賃貸である
こうした事情の分析・主張には、刑事実務の経験が欠かせません。
そのため、準抗告を行う際は、刑事弁護をしっかりと経験した弁護士に早期に依頼することが極めて重要です。
5 まとめ
準抗告を含む早期釈放に向けた活動は、きわめて重要です。
弁護士であれば、
- 勾留の要件に当たらないことを的確に主張できる
- 必要資料を迅速に整え、裁判所へ準抗告を申し立てられできる
- 被害者との示談交渉や再発防止策の提示を通じて、釈放の可能性を高められる
といった対応が可能です。
家族が逮捕された際には、ためらわずに弁護士へ早期に相談してください。
早い段階での対応こそが、早期釈放への最短ルートです。
あかがね法律事務所は刑事事件も豊富に取り扱っておりますので、お気軽にお問い合せください。