アスベスト(石綿)で肺がんになった場合、救済方法はあるか?

今回は石綿健康被害救済法による救済給付の対象となる疾病のうち、肺がんについて制度の概要をご説明いたします。

※労災保険給付がすでに支給されている方は、石綿健康被害救済法による給付を受けることができないためご注意ください。

1 石綿健康被害救済法とは

石綿健康被害救済法(石綿による健康被害の救済に関する法律)は、石綿による健康被害に遭ったものの労災補償の対象とならない被害者の方の迅速な救済を図る目的で制定された法律です。

石綿健康被害救済法が制定されたことで労働者災害補償保険法では補償されていない中皮腫等の健康被害を受けられた方、これにより亡くなった方のご遺族に対しても医療費等の救済給付が支給されるようになりました。

また、アスベスト工場の近隣住民の方や、一人親方等の労災保険給付の対象外の方、労災保険給付の対象ではあるものの時効等で労災保険給付を請求することができない方も給付を受けられる可能性があります。

2 補償対象となる肺がん認定を受けるには?

石綿健康被害救済法に基づく給付を受けるためには、(日本国内において)石綿を吸入することにより肺がんにかかった旨の認定を受ける必要があります(石綿健康被害救済法4条1項)。

上記の認定を受けたといえるためには、胸部エックス線検査・CT検査により、自身の患っている肺がんが石綿を吸入することによりかかった原発性肺がんであると判定されなければなりません。

具体的には、原発性肺がんであって、肺がんの発症リスクを2倍以上に高める量の石綿ばく露があったとみなされる場合に、石綿を吸入することによりかかったものと判定されます。

さらに、次の①~⑤のいずれかに該当する必要があります。

① 胸部エックス線検査又は胸部CT検査により、胸膜プラークが認められ、かつ、胸部エックス線検査で両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、胸部CT検査においても肺線維化所見が認められる場合

② 肺内石綿小体又は石綿繊維の量が一定量以上(乾燥肺重量1g当たり5000本以上の石綿小体若しくは200万本以上(5μm超。1μm超の場合は500万本以上)の石綿繊維又は気管支肺胞洗浄液1ml当たり5本以上の石綿小体)認められる場合

③ 胸部正面エックス線写真により、胸部プラークと判断できる明らかな陰影が認められ、かつ、胸部CT写真により当該陰影が胸部プラークとして確認される場合に、原発性肺がんであって、肺がんの発症リスクを2倍以上に高める量の石綿ばく露があったとみなされる場合

④ 胸部CT画像で胸部プラークを認め、左右いずれか一側の胸部CT画像上、胸部プラークが最も広い広範囲に描出されたスライスで、その広がりが胸壁内側の4分の1以上の場合

⑤ 肺組織切片中に石綿小体が認められる場合

このような場合には、罹患している肺がんが石綿を吸入することにより、かかったものであると判定されます。
なお、③の胸部プラークと判断できる明らかな陰影とは、両側又は片側の横隔膜に、太い線状又は斑状の石灰化陰影が認められ、肋横角の消失を伴わないもの、両側側胸壁の第6から第10肋骨内側に、石灰化の有無を問わず非対称性の限局性胸膜肥厚陰影が認められ、肋横角の消失を伴わないものをいいます。

参照:石綿による健康被害の救済に関する法律施行令の一部を改正する政令の施行(指定疾病の追加)について(通知)(平成22年6月10日環保企発第100610001号)、石綿による健康被害の救済に関する法律における指定疾病に係る医学的判定に関する考え方等の改正について(通知)(平成25年6月18日環保企発第1306182号)

3 まとめ

いかがでしたでしょうか。
補償対象となる肺がん認定を受けるためには高度の専門的判断が必要になります。

アスベスト(石綿)による肺がんかもしれないと思った際には、一度、法律事務所に相談をしましょう。

あかがね法律事務所はアスベストに関する補償給付申請等も取り扱っております。
下記よりご相談をお待ちしております。

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