良性石綿胸水と救済制度
今回は、アスベスト健康被害のひとつである「良性石綿胸水」についてご紹介します。
1 良性石綿胸水とは?
良性石綿胸水とは、アスベストを吸い込んだことにより胸膜に炎症が起こり、胸水(胸の中に水がたまる状態)が発生する病気です。
通常は自然に胸水が消失して治癒するケースが多いとされますが、中には次のようなリスクがあります。
- 胸水が繰り返し発生する
- 胸の痛みや呼吸困難といった症状を伴う
- 良性石綿胸水の後にびまん性胸膜肥厚など重い病気を発症する可能性
このため、症状が軽度であっても、定期的な経過観察や医療機関でのフォローアップが欠かせません。
びまん性胸膜肥厚についてはこちらの記事をご覧ください。
2 診断基準
良性石綿胸水の診断には、以下の4点が重要です。
① 石綿ばく露歴がある
② 胸水が確認されている
③ 他に胸水の原因となる悪性腫瘍や結核などがない
④ 胸水発生から3年間、悪性腫瘍が出てこない
これらを満たす場合に、良性石綿胸水と診断されます。
3 救済給付の対象外とされる理由
良性石綿胸水は、自然に治ることが多いため、石綿救済給付制度の対象外とされています。
そのため、良性石綿胸水そのものでは給付金や補償を受けることができません。
しかし、次のような点に注意が必要です。
- 良性石綿胸水を発症した方は、将来的に救済対象であるびまん性胸膜肥厚や中皮腫などに進展する可能性がある
- 健康被害が悪化した場合、改めて救済給付や建設アスベスト給付金の対象となる場合がある
- 「良性だから対象外」と最初に判断されても、後の経過で認定される余地がある
4 弁護士に依頼するメリット
良性石綿胸水は救済制度の対象外ですが、今後のために弁護士へ早めに相談することが重要です。
弁護士に依頼することで、次のようなサポートが受けられます。
- ばく露歴の整理・証拠化
勤務先や職歴を整理し、将来の申請に備えた準備を進めることができます。 - 症状悪化時の迅速対応
良性石綿胸水からびまん性胸膜肥厚や肺がんを発症した際に、スムーズに救済申請へ移行できます。 - 不認定時の不服申立て
胸膜疾患の診断や認定は医療的・法的に複雑で、不認定になるケースもあります。その際、弁護士が審査請求や取消訴訟を通じて再度認定を目指すことが可能です。 - 労災保険・アスベスト給付金制度との調整
石綿関連疾患は複数の制度が関わるため、どの制度から給付を受けるべきかを戦略的に判断してもらえます。
5 まとめ
良性石綿胸水は「自然に治る」病気といわれますが、繰り返す胸水や将来的な重篤疾患への移行リスクを考えると、決して軽視できません。
また、現時点で救済給付の対象外であっても、症状の変化によって認定を受けられる可能性はあります。
そのため、石綿ばく露歴がある方や、良性石綿胸水の診断を受けた方は、早めに弁護士へ相談することを強くおすすめします。
法律の専門家とともに準備を進めることで、いざというときに速やかに正当な補償を受け取ることが可能となります。
あかがね法律事務所はアスベストに関する補償給付申請等も取り扱っております。
下記よりご相談をお待ちしております。