開示請求・慰謝料請求を受けた場合の対処法と注意点(トレントでアダルト動画を違法ダウンロードした場合)

近年、トレント(BitTorrent 等の P2P)を使ってアダルト動画を違法にダウンロードしたとして、AV 制作会社やその代理人弁護士から「発信者情報開示請求」や「慰謝料・損害賠償の請求」が届くケースが増えています。
この記事では、そうした通知を受けた方がまず知っておくべき法律的ポイント、リスク、対応のステップ、そしてなぜ弁護士に依頼するのが望ましいかを解説します。
1 発信者情報開示請求・意見照会書とは?
発信者情報開示請求は、AV 制作会社などの著作権者が、プロバイダを通じて「誰がその違法ダウンロードをしたか」を調べるための手続きです。
通常、プロバイダに「意見照会書」が送られ、あなた(利用者)に「回答書」を求められます。
この段階では、氏名や住所は知られていないことがほとんどです。利用者に損害賠償請求等の裁判を起こすには住所・氏名などが必要なため、まずは「請求がどのような段階にあるか」を確認することが重要です。
早い段階ですと、「意見照会書の回答書を弁護士が準備する」ということも可能です。
2 慰謝料・損害賠償の可能性と相場
慰謝料請求・損害賠償請求の額は、慰謝料請求者、代理人弁護士、請求対象の動画の数、どの程度違法性が明確か、過去の訴訟例等によって大きく変わります。
近年では、「1社あたり44万円~88万円」の損害金(示談金)を請求されるケースが増えています。
複数動画・複数社から請求が来ると、示談金が合計で数百万円に達する可能性もあるため、請求内容を慎重に把握することが必要です。
3 早期示談を急ぐことのメリット・デメリット
⑴ メリット
- 精神的なストレスが大きいため、「早く終わらせたい」という気持ちが強いでしょう。早期に示談が成立すれば、通知が来た請求については一応の解決になります。しかしながら追加請求がくるリスクは残ります。
⑵ デメリット
- 不要な支出
早期に示談すると、本来払わなくて済む示談金を支払ってしまう可能性があります。特に開示請求の段階では、「裁判所に申立てがされていない」ようならば不開示にできる余地があるケースも存在します。 - 複数請求リスク
意見照会書が届いてから端を発する請求だけでなく、プロバイダにアクセスログが保存されているうちは別作品・別社から追加で請求が来る可能性もあります。すなわち、1件示談したからといって、最終的な解決にならないこともあり得ます。 - 交渉力・情報不足のまま示談すると不利になる
相手の申立て状況などを把握していないと、十分な主張・反論ができません。弁護士が関与していない早期示談だと、相手方に有利な条件を提示されやすいです。
4 ログ保存期間・申立ての有無確認の重要性
プロバイダがアクセス記録(ログ)を保存している期間を「ログ保存期間」と言います。
ログ保存期間はケースによって異なりますが、ログ保存期間が経過すれば違法ダウンロードにかかるアクセス記録が消えることがあります。これを待つことで、交渉の余地が生まれる可能性があります。
また、発信者情報開示請求手続きには、「裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)」と「裁判所への申立て済みパターン」があります。
裁判外手続きパターンであれば開示のリスクはいまだ小さいですし、裁判所への申立て済みパターン(裁判所を使った開示手続き)であれば、開示のリスクは高いです。
このように現在どの段階の手続きなのか、相手側がどの法的手段を取ろうとしているかを確認することが重要です。
5 刑事責任の可能性は?(告訴・逮捕のリスク)
著作権法違反が刑事罰の対象となることはありますが、現時点では、 AV 制作者側や代理人弁護士が 積極的に刑事告訴を行っている例は多くないです。
ただし、「今後随時告訴していく」といった発言をしている事務所もあり、告訴の可能性が完全にないわけではありません。
もっとも、告訴されたとしても、必ず逮捕されるわけではなく、在宅事件扱いになることもあります。
6 弁護士に依頼すべき?
結論から申し上げると弁護士に早期に依頼すべきです。
依頼をするか迷っている場合であったとしても以下の理由から最低限、相談にはいくべきです。
理由 | 内容 |
---|---|
法的知識・交渉経験 | 請求内容の妥当性、申立ての有無、手続きの段階などからより良い解決を打診できます。 |
主張の準備ができる | 不開示のための意見書作成、示談交渉などの準備を整えることができます。 |
リスクの可視化 | 今後の請求、刑事告訴、損害額の見立て等から具体的リスクをお伝えできます。 |
精神的負担の軽減 | 相手とのやりとりを弁護士に任せることで、本人の精神的負荷が減ります。 |
【弁護士を選ぶポイント】
現在多くの弁護士が活動をしているため、どの弁護士に依頼をするか迷われると思います。
弁護士選びの際は次の点に注意してみましょう。
- インターネット・著作権侵害・トレント関連の事件の取扱実績があるか
- 示談・開示請求対応の見通しをしっかり説明してくれるか
- 初回相談で質問に的確に答えてくれるか
7 対応のステップ
⑴ 意見照会書・通知内容を確認する
・どの社からか、代理人はどこか
・発信者情報開示の申立てが裁判所にされているか
・回答期限はいつか
・請求内容(動画数・作品名・金額)が具体的か
⑵ 弁護士に相談、依頼する
・今後の対応や見通しを聞く
・弁護士費用見積もりを取る
⑶ 対応方針を決める
・不同意回答(不開示を目指す)か、示談交渉をするか
・ログ保存期間経過を待つか
・請求金額や手続の段階を把握する
8 よくあるご質問
質問 | 回答 |
---|---|
示談しないと訴訟(裁判)されるの? | 相手側は訴訟による解決手段を持っていますが、実際には示談による解決が多いです。訴訟提起のケースは少数です。 |
示談金はいくらになるの? | 動画数・対象会社等によります。1社あたり44万〜88万円前後になることが多いですし、複数社だと合計額が大きくなり得ます。 |
刑事告訴される可能性はある? | 可能性はゼロではないです、極めて低いです。現時点では「積極的に告訴している」例は少ないです。仮に告訴された場合も逮捕されずに在宅事件となるケースが多いです。 |
回答を放置していいの? | 期限が付されている場合には放置することは危険です。弁護士に相談した上で対応すべきです。 |
自力で対応してうまくいく? | 自力での解決も可能ですが、情報不足・交渉力の差から不利になるケースが多いです。特に示談交渉・申立て状況の見極めなどは弁護士の関与が必須になります。 |
9 まとめ:冷静な対応こそが被害を最小にするカギ
いかがでしたでしょうか。
開示や慰謝料請求の通知を受け取ったら、まず慌てず、内容を正確に把握しましょう。そして、相手の法的手段(申立ての有無)、ログ保存期間、請求額の根拠を確認してから、示談を急ぐかどうか判断します。
また、弁護士に相談することで、示談金を低く抑えられたり、悪条件での合意を避けられる可能性が高まります。
精神的にも経済的にもダメージを抑えるためには、「冷静に対応する」ことと、「専門家への相談」が非常に有効です。
あかがね法律事務所では、これまで数多くのネットトラブルを扱ってきた実績があり、最新の裁判例や制作会社の動向を踏まえて、依頼者に最適な解決策をご提案しています。
下記よりご相談をお待ちしております。